【リリーのすべて】あらすじネタバレ結末!キャストと感想、10のトリビアも大公開!

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映画『リリーのすべて』は2015年に公開された、実在する人物を基にしたフィクション映画です。モデルは、世界で初めての女性適合手術(陰茎を切除して膣を作る)をうけた元男性”リリー”と、その妻。 「LGBTってなあに?」「どんなあらすじ?」「世界中の映画賞を受賞した理由は?」など、映画初心者にも映画マニアにも役立つ情報をお届けします。

  • 『リリーのすべて』をあらすじ順に詳しく解説(感想含む!)
  • 登場人物とキャストのプロフィール
  • 裏話と10のトリビア

 

『リリーのすべて』あらすじ

風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)と、人物画家のゲルダ・ヴェイナー(アリシア・ヴィキャンデル)がW主役。二人はとても仲のよい夫婦ですが……。

人物画家の妻は、夫に女装させ「リリー」と呼ぶが……

人物画家のゲルダ(妻)は、モデルにキャンセルされて夫・ライナーを女装させます。ライナーも初めは嫌がりましたが、段々と乗り気になってきます。

見てください、このまぶしい笑顔!女装時のライナーは「リリー」と呼ばれ、恍惚とします。ライナーは風景画家として有名ですが、大の舞踏会嫌い。でも当時は舞踏会に行かないことは出世できないことを意味しました。

「舞踏会なんて行きたくない」というライナーに、妻・ゲルダはこう言います。「じゃ、別人になってみたらどう?例えば、女に……”リリー”にもう一度なればいいのよ」と。

運命の歯車が狂い始めます。ライナーは女装して舞踏会へ行きますが、会場中の人気者になってしまいます。そして、なんと男性とキスをしてしまうのです。

夫は女装に目覚め「リリー」として着飾るように!

妻・ゲルダは怒り心頭。「もう二度と女装しないで」と告げますが、すでにライナーの心は「自分は女で、リリーだ」と自覚するようになっていました。

股間にあるモノにも違和感を感じ、隠すようになるライナー。ゲルダに隠れて、男と密会するようになっていました。完全なる浮気の始まりです。(以下、ライナーは「リリー」と呼ぶことにします)

ゲルダは、夫を病院に通わせ、「性的倒錯をなおす治療」が始まりました。当時のLGBTへの認識はこんなもんだったのかと衝撃です。しかも、なんと「放射線治療」なんです。それを股間に当てるってどういうこと……。

画家としては成功する妻。だが夫はより「女」へ近づく

それでも治らない(LGBTは病気ではないので、もともと”治る”という概念ではない)”リリー”に対して、妻・ゲルダは疲弊していきます。ところが、”リリー”を描いた絵が、飛ぶように売れていきます。妻・ゲルダは夢のパリで個展をひらくことに!

個展は大成功しますが、”リリー”の心は沈んだまま。ゲルダは、幼馴染のマティアス・スーナールツ(ハンス・アクスギル)に、男姿の”ライナー”に会ってもらおうとします。しかし”リリー”は女の姿でマティアスと話し込んでしまうのでした。

ちなみにマティアスさん、すごくプーチン大統領です。 なんで映画にプーチンが出てるの??という位に。いうなれば「優しいプーチン大統領」。お勧めです。

”リリー”の気持ちが分からないゲルダ。思わず叫びます。「私の夫を返して!」「私は夫と会いたいの。夫と話をしたいの。夫に抱きしめられたいの!」セックスレスも問題視されている中、夫が「女」になって、他の男に恋をしている姿を見るのは過酷なことでしょう。

”リリー”は男に戻ることを決意するが……

”リリー”は男に戻ろうと「男装」を始めます。ところが、女性らしい仕草を身に着けた”リリー”は街の男に暴行を受けてしまいます。思わずマティアスのもとへ駆け込みますが……マティアスは「病院にいけ」と言うばかり。

しかし、病院では「精神分裂病」として拘束されそうになります。 男姿でも、すでに女らしい”リリー”に私も涙ぐみました。リリーにとっては、本来の自分をようやく見つけたのに、どうして世の中が認めてくれないか分からないのです。

ゲルダは夫の苦しみを理解し、夫に最適な病院を探し当てます。それは「男性器を切除し、女性器をつける手術を行う医者」。ゲルダは心配しますが、”リリー”は「たとえ死ぬとしても、私にとっては希望」といって汽車で出発するのでした。

夫婦は和解し、『リリーのすべて』を受け入れるが……。

最初の手術は、男性器を切除するもの。ゲルダは手術後の苦しみに耐えかねる”リリー”に寄り添うのでした。

なんとか回復して、夫婦は新しい生活を始めます。 ”リリー”は化粧品店で働き始めて、幸せな日々を過ごしました。この頃、”リリー”が描いていた日記が、のちに映画の原作へとつながっていくのですから、感慨深いものがあります。

しかし、”リリー”の心は「女」です。 「いつか子どもを産みたい」と思う”リリー”は二度目の手術で、膣をつけようとします。困難を伴う手術のあと、”リリー”の体調は思わしくありません。

この頃の真っ白な顔の”リリー”は悲しくて見るのも辛いですね……。 体調が悪化した”リリー”は、妻・ゲルダと、幼馴染・マティアスに看取られて、天国へ旅立つのでした……。

ゲルダとマティアスは、”リリー”の故郷へ向かう

ゲルダとマティアスは、”リリー”の故郷へ。そこには、かつての”リリー”が描いていた通りの風景がありました。”ライナー”が”リリー”になる過程で、描けなくなっていた絵が……。この寂しい風景が、”ライナー”の原風景だったと思うと胸が締め付けられますね。

ゲルダのスカーフが空を飛んでいきます。このスカーフは、”リリー”との思い出の品。追いかけようとするマティアスでしたが、ゲルダは言うのでした。「いいの、捕まえないで!……彼女は、ようやく自由になれたのよ」と……。

『リリーのすべて』は、全編を通して絵画的です。そしてこのラストシーン、飛んでいくスカーフを見つめるゲルダの目には、嬉しさと悲しさと後悔と希望が見え隠れします。この目だけでも一見の価値あり!全世界で高く評価されたのもうなずける作品でした。

 

『リリーのすべて』登場人物・キャスト

アイナー・ヴェイナー/リリー・エルベ(エディ・レッドメイン)

夫のアイナー(女性名はリリー・エルベ)を演じたのはエディ・レッドメイン。映画や舞台で数々の賞をとり、イギリス王子ウィリアム王子と同級生で、銀行家の父や兄をもつ……という出自も実力も完璧すぎる俳優。アイナーからリリーへの変化を、完璧に演じ切りました。本当に女の人なんだ、と思うほどに!

ゲルダ・ヴェイナー(アリシア・ヴィキャンデル)

ゲルダを演じたのはアリシア・ヴィキャンデル。夫を愛するが、愛ゆえに「夫に抱きしめてもらえない」辛さを抱く妻を演じきりました。寂しさ、孤独、動揺、それを夫に気取られないようにするところまで、目だけで表現する演技力の高すぎる女優さん。王妃役や、『アンナ・カレーニナ』のキティ役を演じてきた女優さんならではの気高さで観客を虜にしました。

ハンス・アクスギル(マティアス・スーナールツ)

ライナー(リリー)の幼馴染役を務めたのはハンス・アクスギル。普段はプーチン大統領っぽさは20%くらいですが、この時は完全にプーチン大統領にあわせています。マティアスは、小さなころのライナーにキスをし、それが”リリー”が「自分は女だ」と自覚するきっかけでした。

ヘンリク・サンダール(ベン・ウィショー)

ライナー(リリー)にキスをした舞踏会の男を演じたのは、ベン・ウィショー。リリーは男性器を切除した後に彼に会いに行きますが、「僕は女装している男が好きだったんだ。女も、男性器のない君も恋の対象にはならない」と断ります。ちなみに役者のベン・ショーは、男性と結婚しています。

ウラ(アンバー・ハード)

「女性」になるための手術をすすめたウラ役を演じたのは、アンバー・バード。ジョニー・ディップと結婚していた経歴もありますが、バイセクシャルだと公表し、同性婚を支持する活動を積極的に行っています。また、DV被害者救済にも取り組む社会派の女優です。

『リリーのすべて』10のトリビア

今回は実在する人物ということで、本編との相違点を中心にまといます。

実在したリリーの原作本「Man into Woman」

リリーは一冊の本を残しました。自分の半生を振り返った『Man into Woman』という本で1931年に出版されています。日本語訳すると、『僕のなかの女』でしょうか。この本は現在日本語では入手できませんが、当時の社会でセンセーショナルを巻き起こしました。 その後、作家デヴィッド・エバーショフが2000年に『The Danish Girl』という本を刊行します。日本語では 『世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語』。これが、映画の原作となったのですね。

史実と映画『リリーのすべて』の違いとは?

手術のあと、リリーは法律上でも性別を変更し、名前を「リリー・エルベ」に変更しました。作中でその部分が書かれなかったのは尺が足りなかったからだと思いますが、リリーにとっては、とても嬉しい出来ことだったでしょう。 そして”リリー”の手術を知ったデンマーク国王クリスチャン10世は、なんとリリーとげエルダの死を無効としていたのです。つまり二人の間に夫婦関係はなく、婚姻もしていない、としたのですね。それでもゲルダは”リリー”を支援し続けたのですから愛がうかがえます。

”リリー”が恋した男と、死への道行き

もともとリリーが手術を繰り返したのは、一人の男性に恋をしたから。相手はフランス人の画商クロード・ルジュンです。彼のために素敵な女性になりたいと願う夫を、元妻が支え続ける……という構図を見ると二人は「夫婦」である以上に「親友」だったのだなと感じますね。 映画では、リリーは二回目の手術のあとに亡くなっています。しかし史実では、五回目の手術のあとに天国へ旅立ちました。この五回目の子宮の移植の拒否反応による死でした。享年48歳。しかし早すぎる死とはいっても、「本来の体」に戻れたリリーは嬉しかったでしょう。

鼻血とマフラーのレトリックについて

女装してパーティにいったとき、リリーは男性とキスをします。はじめは拒んだリリーも徐々に情熱的になりますが……鼻血を出してしまいます。リリーは、この情熱的なキスの瞬間に「自分らしい性」に目覚めたのです。 ほかにも、ゲルダが巻いてくれたマフラーを、リリーはいつでも身に着けているか、手にもっています。ラストシーン、マフラーが飛んでいくとき、ゲルダはこういうのです。「良いの。捕まえないで。もう、自由になったのよ」。リリーは死んではじめて自由になれた……LBGTに理解のない時代の唯一の反抗は死だったと思うと、時代の進歩に感謝せざるを得ません。

リリー亡きあとのゲルダの「その後」

リリー亡きあと、ゲルダはイタリア人外交官と再婚します。しかしわずか5年で破局。またデンマークに戻ってきて、そのあとすぐになくなりました。リリーの死から9年後のこと。ゲルダにとって、リリーがどれほど大きな存在だったかがうかがえます。ちなみに、リリーを書き始めてから売れたのは本当の話。 ちなみに実はエロティカのイラストレイターでもあり、レズビアンだったという説も唱えられています。LGBTに対する偏見の強いなか、互いに同性愛者だったが、世間体をたもつために夫婦のフリをしていたとする論文もあるほどです。

『リリーのすべて』でアカデミー賞俳優に!

アイナー(リリー)を熱演したのはエディ・レッドメイン。今でいうと、ファンタビのニュートの印象が強いが、『博士のセオリー』や『レ・ミゼラブル』でも超重要な役を好演していました。「リリー」の役で一躍アカデミー主演男優賞を受賞!、同作品でゴールデングローブ賞主演男優賞、英国アカデミー賞主演男優賞、全米映画俳優組合賞等数などを総なめにしています。

まとめ

LGBTについての理解が早急に求められる昨今。1926年にすでにこういう夫婦がいたことは将来への希望でもありますね。『リリーのすべて』は俳優の演技力、脚本の力、テーマ設定、すべてが100点満点です。 性適合手術は死の可能性すらある危険なもの。それを受けてでも「自分の性別」を探す人がいることを教えてくれる大事な作品ですし、特にLGBTに興味のない人でも十分に楽しめる作品。一度はみておきたい名映画です。